ブランドストーリー

かぐらやブランドストーリー

1. 小さな発想から生まれた奇跡のバッグ。

私が生まれ育ったまちは瀬戸内海国立公園の山と海と島々に囲まれた自然豊かで穏やかな気候の地域で学生服などの衣料産業が発達し、 また、い草の産地からほど近いこともあり畳縁 (たたみべり) を製造する工場が幾つも見られるところでした。
畳縁は畳表の縁 (ふち) を覆って丈夫にし、 色や柄で雰囲気を醸し出すためのもので、こどもの頃には、 組み付けられる前のリボンのようなテープ状の大きなロールを日常、 あたりまえのように見ていました。
50歳を過ぎた頃、 ふとしたきっかけでインテリア・雑貨・家具の小さなお店を地元で開店。 お店に並べる商品の買い付けで、色々な展示会を見て回っていたとき 小売り用にと少し洋服も仕入れてみました。最初は上手くいかなかったものの徐々にお求め頂けるようになり、 その数年後のこと今度は洋服を作って、自分も卸先様向けの展示会に 出品してみようとエントリーしてみました。その展示会でのことです。 洋服だけではなく、まわりの小物にもこだわった展示を考えていたとき 自分でバッグを作ってみることにしました。
ディスプレイアイテム程度のバッグなので実際の使用のことは考えず あくまで服を引き立たせるためにと…色柄が独創的であることと、 こどもの頃から見慣れていたことから畳縁を素材として選びました。
しかし展示をご覧頂いた方々からは、今までに見たことのないバッグだと 驚くほど高い評価を頂き専門店さんから多くのご注文のお話までも頂くことになりました。 それは私の予想もしなかった奇跡とよべるバッグ誕生の瞬間でした。
2006年、「かぐらやバッグ」の第一号を百貨店で販売。今では、大手百貨店様に専門のコーナーを頂ける程の人気のバッグとなっていきました。

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様々な製造工程で熟練した専門的な縫製技術が駆使されています。

2. 唯一無二の素材。だから、おもしろい。

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畳縁だけにとどまらず様々な素材に出逢い、魅力の発見に感動することも。

畳縁 (たたみべり) は、もちろろん畳の縁を彩るために作られた素材。
だからこそ、従来のバッグとは一目で違いが見てとれ個性を発揮しやすい素材としてとても魅力的です。
しかしその他の特性は、バッグにとっては少々不都合…を通り越して“適していないのでは”とも思えるものです。 よくあるバッグの素材に比べ、丈夫で軽いのはとても大きなメリットですが畳縁の幅は8cmしかないので、バッグのような大きなモノを作るためには繋ぎ合わさなければならず、とても手間がかかってしまいます。
また、テープ状の両サイドは、元来、内側に折り込んで見えないところなので仕上げの状態は様々という具合でした。
しかし、私はバッグの製品化にあたっては、この畳縁という素材から離れることは考えませんでした。 むしろこの特性をうまく活かせれば、個性豊かなデザインのバッグが創れると思えたからです。
私には素材のもつ様々な特長、「良い面」「悪い面」すべてが魅力に思えたのです。
当然その魅力が引き立つようなデザインを考え、カタチを創り、製品化してきました。 第一号が世に出てから、お求め頂いたお客様や、百貨店等の卸先様から頂戴する様々なご意見、ご感想も取り入れながら、「かぐらやバッグ」は日々改良を重ねています。
そして畳縁だけでなく様々なバッグの素材達にも出逢いながら新たな「かぐらやバッグ」の世界を広げていきたいと思っています。 その時には、その素材のもつ特性を都合よく曲げるのではなくむしろ尊ぶ気持ちで生まれさせたいと思っています。 自然味あふれる意匠にたどり着くことは、“適さない”からこその恩恵なのかも知れません。

3. まずはデザイン。それゆえの問題。

バッグの製品化に関わるのは専門的な知識や技術をもった人というのが世の常識なのかも知れません。 けれども当時、私はバッグ作りに関してはプロではありませんでした。あくまでデザインのみを優先させた感覚的な創作物。
そのうえ、製造現場で優先される新作発表スケジュールや販売戦略といったことにも門外漢でした。実は今でもそこはあまり変わってないのですが。
しかし、納得がいくものを作り出すためには何を優先さなければいけないのか?「かぐらやバッグ」のデザインの命の源は、自由な発想や遊び心であると思っています。
なので、そのデザインを実際の使用に耐え、安定して製品化するには色々と問題が発生しました。 革製の取っ手の取り付けひとつにしても、ランダムな縫い込み方を普通の革用工業ミシンで再現することはなかなか難しいことでしたし個性的なデザインを表現するための縫い合わせを安定して表現することも同様でした。
また、軽さにこだわりたいと金具を限りなく減らすことも実際の製品化においては大変なことでした。かぐらやオリジナル色の畳縁の製造も、メーカーさんの大きな協力があってこそのことでした。
それらの解決にあたっては、私自身も取り組みましたが開店当初から一緒に携わってくれている社内外のスタッフの存在がとても大きなものでした。「かぐらやバッグ」は、彼ら彼女らの様々な助けがあって初めて製品として実現できたのです。
ミシンメーカーさんが請け負ってくれた作業別の専用ミシンの製造や縫い方を再現するためのオリジナルプログラム、そして縫い金型の開発。私の想い描く新たな畳縁の製造を請け負ってくれるメーカーさんの支援。それらの交渉に日本各地を奔走してくれたスタッフのみなさん。私の小さなアイデアだった畳縁バッグは、多くの人の大きな努力なくては世の中に出ることはなかったことでしょう。
今では畳縁の使用色だけでもオリジナルもあわせ数百種に達しています。製造工程も数段階に分担し、それぞれの工程の専任スタッフが製造に携わっています。納期の件も優秀なマネージメントスタッフのおかげで安心していることができます。
それはとても幸せなことであり、日々ほんとうに感謝しています。

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素材のおもしろさ、魅力的なデザインのために、製造用の機械にも多くの工夫をしています。

4. 完成を求めて、あなたの元へ。

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日本的な風景やモノに出会う時、新しいバッグのインスピレーションが自然と湧いてきます。

私のデザインの素となるもの。
それは日本の風景であり、建築であり、美術であり、食であり…それらと出会ったときの感動から得られたインスピレーションです。
こどもの頃から美しいと感じていた、日本的なモノたちと触れたとき新たな創造が湧き上がります。 そんなときには時間も忘れ、新たな「かぐらやバッグ」を創造・表現するために何時間も没頭してしまいます。
昨今、日本の精神や職人魂というものが世界から注目されるようになり、ありがたいことに 「かぐらやバッグ」も国を越えて、多くの人たちの手に渡り 愛用して頂いているという、とてもうれしい話を耳にします。 世界中の素敵な方々が、素敵に使われていると見聞きできることは、とても嬉しいことです。
私たちの拠点である岡山県倉敷市児島は、ジーンズやスクールウェアなど 縫製産業の盛んな地として知られています。 「かぐらやバッグ」も児島や倉敷という枠を越え「日本ブランド」として 世界に発信していけたら…。
そんな夢も膨らませながら、新しいバッグの製造に取り組んでいます。 お客さま一人ひとりの手に届いたバッグが、使い込まれ さらに美しく磨かれていくことを想像すると温かい気持ちで満たされます。 「かぐらやバッグ」は、お客さまの手に届くまではまだ未完成。 あなたに使われて、あなたの想い出と共に、あなた色に変わっていく。 その様を楽しみながら、使い、愛でて頂ければと思っています。
どうぞあなたの元でさらなるストーリーを綴り、素敵に成長していく 「かぐらやバッグ」でありますように。
日本の、世界のどこかで 新たな魅力をそなえた「かぐらやバッグ」に出会えることを楽しみにしています。